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訴訟による管理者の解任についてH24.11.3NPO法人 助っ人会

category : コラム 2012.11.13 

 1 管理者とは
管理者とは、マンションの管理をする為に管理規約又は総会の決議により選任された者を言います。(区分所有法25条) 区分所有者が全ての管理業務を全員で行うことはできませんから、このような代表者を決めるわけです。
この管理者は、規約に別段の定めがないかぎり、総会の決議によって選任し、解任することができます。規約で定める場合は、直接、特定の管理者を定める場合と、規約では管理者を置くこととその選任方法のみを定め、具体的な選任は総会によって決める場合とがあります。
そして、管理者の資格については、特に法律では制限していませんから、区分所有者ではなくても、また、自然人ではなく法人(会社)でもよいとされています。
一般的には、管理組合の理事長を管理者とする規約が多いようです。しかし、分譲の時にはそのマンションの分譲会社またはその関連の管理会社が管理者として選任されていることもあります。
問題となるのは、直接、規約で特定の管理者(前述のように分譲会社や関連の管理会社)を定めていた場合や、規約で解任には区分所有者全員の同意が必要で あるとされている場合です。このような場合、規約の改正(区分所有者の人数と議決権の各4分の3以上が必要)ということになりますので、解任は困難です。

2 管理者の解任
解任の方法としては2つあり、1つ目は規約に定めた方法または総会の決議によってできます(区分所有法25条1項)。この総会の決議は、規約に別段の定めがないかぎり、区分所有者および議決権の各過半数(いわゆる普通決議です)の多数決によって解任できます。
もうひとつは訴訟によって請求することができます(区分所有法25条2項)。理論上は区分所有者一人だけでも訴訟を提起することにより解任請求できます。

3.訴訟による解任の要件
訴訟による管理者の解任方法は 集会決議による場合と異なり、その要件は厳しく、解任理由として「管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情がある」ことが要求されます。
さらに管理者としての善管注意義務や誠実義務違反の程度はもちろんのこと、信頼関係の程度(東京地裁平成2年10月26日判決・東京地裁昭和53年1月26日)も考慮されます。
実際には管理者の解任請求は、一人の区分所有者も訴訟提起できるという意昧で門戸は広く開かれていますが、請求が認められるためには非常に高いハードルが課されているといえます。

4、結び
そもそもマンション管理組合の運営は、基本的には管理組合内部での団体的な自治のもとで行われます。
総会招集に係る各種手続きや、議決権割合の基本、規約等の内容の衡平性確保の要請など、団体的白治の適切な実現に障害が生じるようなものについては区分 所有法が定めを置いて規制しますが、それに従っている限りは、マンションごとの個別性を前提に、各管理組合の団体的な取り組みや意思決定を重視するのが、 マンション管理に係る諸法令の基本的スタンスといえます。
したがって、管理者の解任の問題も、管理組合内部での対応が基本となり、まずは25条1項の総会決議による対応を検討することが求められているということになります。
つまり 裁判所に対する管理者の解任請求は、あくまでも管理組合の団体的自治が機能しない特別な場合などに限定して、その利用の当否を検討すべきでしょう。  (氏家)


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